子供の視力に影響を及ぼす遺伝的要素の割合は、せいぜい5%程度と言われています。
そしてそのほとんどが「強度近視」と呼ばれる強い近視に関わるものです。
近視の子供の数は年々増加の一途をたどっており、中学生で裸眼視力視力が1.0未満の子供の全体に占める割合はほぼ5割弱、半分程度となっています。
この割合がわずか30年前は3割程度であったことを考えると、近視の子供の数がいかに急スピードで増えてきているかがわかります。
この30年間で子供たちの近視をここまで進めた最大の要因は、やはり子供たちを取り巻く生活様式が大きく変わってしまったことにあると言えるでしょう。
たとえばTVゲームやスマートフォンの小さな画面など、すぐ間近あるいは手もとのディスプレイ画面を長時間見つめるような状況が生活のなかで大きく増えてきたことが、近視の子供の増加に拍車をかけてきたことは間違いありません。
30年前の子供たちは、これほどテレビやスマホのディスプレイ画面を見つめ続ける環境にはなかったのです。
他にも、学校が終わってから夜間の塾に通う子供の増加、すなわち夜遅くまで読書や勉強のために手もとで細かな字などを見続ける時間帯が長時間化したことも、要因としてあげられるでしょう。
しかしだからといって、視力を悪化させないために子供たちの塾通いを止めさせたり、あるいはTVゲームをとりあげたりすることは、いまや現実問題としても難しいでしょう。
ただし、親が子供の視力の変化に注意を払うことで、子供が悪い姿勢で本を読み続けたり照明の暗いところで勉強を続けたりした時にそれを注意し子供に教えていくことで、目に負担の少ない環境を実現するとともに、子供自身にも目を保護することの大切さを学ばせることができます。
あるいは、「おや?おかしいな?」と感じた段階ですぐに眼科医に診せることができたなら、近視や弱視などさまざまな目の異常に対しても、早期対応・早期治療を行うこともできるのです。
子供は目も身体も日々成長を続け、毎日が未完成・成長途上にあるわけです。
眼の組織、そして視力もその例外ではなく、成長し発達していく身体の器官の一部です。視力は眼を使うことによって、発達するものなのです。
生まれた直後から眼を使っていかせないと、成人後に良い視力が得られないと言われます。また6歳頃まで眼を使い続けることを怠ると「弱視」となって、きちんと視力が出なくなります。
弱視は「眼の器官に異常が無いのに、裸眼の視力が一定以下にしか出ない状態」を指します(生まれつきの斜視が原因となる「斜視弱視」や、両眼の見え方に差がある「不同士弱視」などもあります)。
視る力そのものが弱いわけですから、(治療用器具を除く)メガネなどで矯正しようとしても、視力は上がりません。
弱視は「眼を使うこと」がその主な治療になりますが、恐いのは脳の視覚中枢の発達が13歳頃で終わるため、成人後に治療を始めても治らないことです。
言い換えれば、「子供のうちなら予防・治療できるのが弱視」なのです。
しかも弱視は子供が小さいうちほど(3~6歳頃まで)治りやすいとされるため、できるだけ早い時期に治療を開始すべきです。小学校に入学してからでは遅く、治療による視力の矯正効果も乏しくなります。
子供の視力に及ぼすマイナス要因と、その対処法(2)。 では、幼児・子供の「斜視」等についてご説明します。